tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

企業の人材育成観は変わったのか?

2018年02月05日 11時09分46秒 | 経営
企業の人材育成観は変わったのか?

 大手企業で人材開発にも長く関わった友人がいます。今は、産業界の人材育成、教育訓練を主要な仕事にする団体に居られますが、リーマンショック以来の企業の人材育成の低迷期から、漸く、この所、何となく抜け出してきたような感じだと言っています。

 昔は、ひとを使うのと育てるのは両方とも企業の役割と考えていた企業が多かったのですが、つい何年か前まで、デフレ不況の中で、企業の教育費は3K(交際費、広告費、教育費)の1つだなどと言われて、産業訓練、人材育成の支出は随分絞り込まれました。

 「企業の人を育てる意欲が回復して来たことは本当によかったですね」などと話したところですが、反応はイマイチで、「いや、何か昔と違うんですね」というのです。

 聞いてみますと、企業の教育訓練担当者自体が、きちんと教育を受けていない世代という事もあるのでしょうか、今一つ腰が入っていないような感じがするようです。
 例えば、すぐに役に立ちますかといった、何か速効的なハウツーを求めているような印象とか、仕事が忙しくて教育訓練などを受けている時間が勿体ないから、出来るだけ短期で効率よく、といった感じを受けることが多いそうです。

 嘗て、1年の計は種をまくこと、10年の計は木を植える事、100年の計は人を育てる事などと経営者からお伺いしたことは何度もありますが、長期不況の辛酸を舐めて、日本企業も変わったのでしょうか。
 最近では「即戦力」という言葉も良く聞かれます。しかしそれは、誰かが育てたから即戦力になれるので、矢張り育てる人が必要なのです。

 そんなことで、それではと統計数字を見てみました。厚労省の「就労実体総合調査」で総額人件費の内訳を調べています。毎年ではなく、ほぼ3年おきですが、一応長期の数字が取れます。
 
 1973年は第一次オイルショックの年ですが、2.1%でその後第二次オイルショックもあり漸減しますが、1980年代後半に入り、バブル期は賃金こそ安定上昇ですが、教育訓練費は比重を増し2.4%に達します。

 1991年はバブル崩壊の年で、それから教育訓練費の比重は再び減少しますが、いざなぎ越えの微弱な景気上昇でも、1.8%への回復を見せます。
 しかし2009年のリーマンショック直後には1.4%という低水準に急落します。そして問題はその後です。
その後2013年からは、日銀の異次元金融緩和で景気は急回復に転じます。

 そして今日まで、景気は長期に回復、円安メリットも含め企業は自己資本比率を大きく改善します。
 ところが2016年(平成28年)企業の教育訓練費の比率は1.3%と未曽有の低水準に落ち込みます。これは何を意味するのでしょうか。

 いざなぎ越えの極く微弱な回復でも、教育訓練費の比率は回復しています。しかし今回の長期の好況の中で、教育訓練費は低下しているのです。
 リーマンショックの後遺症といえばそうかもしれませんが、これがもし、日本企業に教育訓練を自力でやろうという気持ちが失われ、他人の教育した人材を即戦力として採ればいいとか、すぐ役立つノーハウを教えてもらえばいいといった近視眼的な意識に傾斜しているのであれば、日本経済・社会の将来に禍根を残す惧れが大きいでしょう。

 多分、日本企業は、早晩本来の日本企業の考え方に立ち帰っていくと思っていますが、それには、経営管理者の早期の日本的経営(長期的視点に立ち、人間を重視した経営)の原点回帰が急務のように思われるところです。

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